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暮しの中の藍布 報告誌

2023年8月に徳島県立21世紀館多目的活動室にて開催した四国大学 藍の家 所蔵品展「暮しの中の藍布 報告誌」が完成しました。図録「藍の家」の制作から展示「暮しの中の藍布」の企画、そして今回はこの報告誌の編集に "藍の家 藍染研究員" として参画しました。一応、大学ではそういう肩書きになってるのですが、学生らにとっては掃除のおじさんです、、

 

 

 

 


展示を企画する時点で報告誌の制作は「必ずやる」と決めていました。ただ予算や制作時間の都合もあり、次年度の大学予算で制作することとなり展示から約1年後の発刊となりました。

 

僕はこれまでお店以外で様々な事業に関わってきましたが、特に県の事業は「やりっぱなし」で反省会は皆無でしたし、やたらお金をかけた過度な写真集は不快の極みでした。(学生の為にならないので藍の家の本棚にあるものはこっそり捨ててやろうと思っている)展示を伝える報告誌の制作をどのように進めるのか、どのように記録に残すのかは手探りでありましたが、展示は県からの助成金を得ているものの、報告誌の制作は切り離された次年度の大学事業であることから、四国大学「藍の家」を管理する有内則子准教授の意向を汲みつつ、僕の意見を大きく反映させてもらっています。正直、僕は本心では常に「自分が決めたい」と思っているし、違うと思うことはだいたい譲れないし、たとえ覆らなくても「違うことは違う」と伝えなければ、次また同じことが起こると考えている。(だから今や県庁内では遠近は"鬼門"と呼ばれているらしい)とか書くと仕事の依頼が無くなりそうだけど、、この報告誌も沢山ご迷惑をお掛けしながら完成しました。ありがとうございます。

 

基調講演と寄稿をお願いした明治大学准教授の鞍田崇さんとは、もう10年以上のお付き合いとなるのですが、鞍田さんがイベントやフォーラム参加される度に、後に制作される広報誌を度々郵送していただいていたことが大きな助力となったことは間違いなく、参考にさせていただいた冊子は数えきれない。多忙に関わらず2年続けて徳島にお越しいただいた鞍田さんには感謝しかありません。本当にありがとうございます。

報告誌は四国大学 藍の家の紹介と、基調講演をお願いした鞍田さんを含め、有志8名の方の感想と会場写真で構成されています。執筆者については、展示に関わっていただいた方に僕の方からお願いしました。当初から10名程度を予定しておりましたが、県民文化課、観光課の職員さんには拒否されました・・・それぞれお立場はあると思いますが、文化事業に関わる姿勢としては疑問が残る。だが主催者側の僕が真っ向から県の姿勢を批判していた中で、展示を見に来てくれた職員さんにそれ以上は望めないし、会場へ足を運んでいただいただけでも有難いと捉えています。僕はプロジェクトのキャスティングは「そこに居合わせた人がすべて」と理解しています。もちろん他にも執筆をお願いしたい方はいたのですが、またいつかご縁があると信じています。(まあホームランバッターばっかりとか焼肉ばっかりとかも面白いかもだけど、それよりご縁が大事です)編集は集めた印を並べるようなゲームではないし、予算が潤沢あれば必ずいいものができるとは限らない。むしろ制約があるからこそ創意工夫が生まれる。 (ん、民藝ぽいぞ)。展示から「めぐる、」に関わっている旧知のメンバーで進めてきたので無理を聞いてもうことができたけれど、1500部を制作して全体の予算が約60万円で、デザインや編集補助の仕事には迷惑をかけた側面があるため次回への課題として心に留めておきたい。あと、冊子にはお名前を入れることができなかったけど、予算がつかない時点で会場や基調講演の撮影を申し出てくれた小松崎 剛さんにも心から special thanks です。基本、関わってくれた人の持ち寄りでこの報告誌はできていますし、これらの仕事を依頼した時点で僕の役割はほぼ終わってたような気がします。

 

 

こんな拙い僕に展示の大切さを説いてくれたのは、ランドスケーププロダクツの中原慎一郎さん、エフスタイルの五十嵐恵美さん星野若菜さん、そしてリビングワールドの西村佳哲さん。報告誌のあり方についてはd&deparmentの活動や、鞍田崇さんの送ってくれた沢山の冊子、日本民藝協会の機関紙「雑誌民藝」からその必要性について考える機会をいただいたと思います。他にも事業でご縁をいただいた方や、自分の取引先様から影響を受けた要素がこの報告誌には沢山詰まっています。

 



その中でも最も大きいのは、2013-2014年に d design travel workshop TOKUSHIMA という観光冊子を作り、ワークショップを開催する「クリエイティブツーリズム事業」に参画したことでした。(徳島県東京本部主催)

ナガオカケンメイさんを何度か徳島へと招きご案内したことは忘れられない。この事業には主催者であると同時にライターとしてもチャレンジできたことに後悔はないけれど、当時の自分には明らかに荷が重すぎて、できないことをやろうとしていたとも思う。後々の関係性が続かなかったのは、明らかに僕の経験不足と余裕のない生活が招いたこと。関係が壊れる痛みは言葉や文字することができない、もうあのメンバーで集まることは二度とできないだろう。

 

あれから10年が経ちその間にも沢山の失敗を重ねてきたけれど、外部からクリエイターを招く機会には批判や矛盾を引き受けながら「絶対に必要なんだ」と責任を持って着地させるローカルの人間が必要だ。ただそんな苦しい経験がなければ今回の報告誌を作ることはできなかった。だから当時あの事業に参画・尽力してくれた皆さんへの感謝を忘れることはない。僕にとっては「10年前もっとやれただろう」という "自分へのリベンジ" こそが報告誌発刊への原動力でした。

 

 

 



いつも批判的な意見を書いて申し訳ないが、県主催の事業はやったら終わりで反省や改善はなく(予算は次々と降りてくるから反省する必要がない?)お金の切れ目は縁の切れ目で関係性の継続はない。よくある「来場者が何人来た」という報告もあっていいけれど、その先にどんな変革の可能性、希望や光が見えるかどうかは、来た人の数ではなく受け取る人の心にどの程度刺さるかであって、それは予算の大きさではなく主催者側の取り組む姿勢こそが大事なのではないかと僕は思う。そして責任を持って着地させるローカルの人間は県職員ではなく、地場に根を降ろし仕事を営む人間でなければ関係性を保ち引き継ぐことはできない。

 

展示で来場者に栞を配布すること、地元のテレビ局に展示の案内を送り取材をお願いすること、「めぐる、」の連載記事 Made in Local.19 への寄稿で所蔵品を取りあげること、鞍田さんの基調講演を動画に残すこと、そして報告誌の制作にあたり数名に感想を書いてもらうこと・・・展示という "最大出力で起こした波" を途切れることなく送り続けるイメージで、その余韻に触れられる機会を予め仕込んできた。でもこのようなデザイン的な外側からの干渉は内側に育むべき愛情がなければ絵に描いた餅になるだけだ。僕らの目的は展示をすることでも報告誌を作ることでもはなく、「藍の家の活動や所蔵品の価値を伝える」ことにこそある。これらが健康的な仕事である為に、目的と手段が入れ替わることがないよう検証を続けたい。

 

はっきりとわかるのは、関わっていただいた皆さんに気持ちを重ねてもらうことができて本当に嬉しいということ、そして報告誌を制作したら終わりではなくて、これがあたらしいスタートだということです。

 

 

余談ではありますが、Made in Local.19 にも書いたとおり、四国大学にとって藍の家と所蔵品は「創設者の理想と教育理念を今に伝え、土地らしさという個性を受け継ぐ無二の存在」です。地方の私立大学はこれから厳しい経営を迫られますが、いまここでしかできない地域性のある教育とは何か、これを機会にもう一度考えていただきたい。

 

展示や報告誌の副産物として「人材の発掘」がある。報告誌に寄稿してくれた皆さんと、その周りの方が「藍の家」を介して新しい関係を構築できるような機会を作り「藍の理解者」を増やすことは、未来のプレイヤーを育てることに繋がるはずだと考えている。そしてこのような経験を積んだ人こそが徳島の文化事業に関わってゆくべきだと僕は思う。

昨年の展示を見ていただいた方、報告誌を手にした方、是非ご感想をお聞かせください。

 

 



 

 


四国大学「藍の家」所蔵品展/暮しの中の藍布 報告誌


発行者|四国大学学際融合研究所

編集|有内則子 東尾厚志

編集補助|株式会社あわわ(めぐる、編集部)

写真|生津勝隆

デザイン|大東浩司(AD FAHREN)

 


藍の家について・報告誌について/有内 則子

仕事の宝庫/鞍田 崇

おしゃべりな藍布/池尾 優

悦びが生むもの/金澤 光記

かなしき藍布と重ねる暮し/吉永 ゆかり

藍の家の布たち:生きた布は語る/東本 紗菜

生まれてくるもの/齋藤 千夏

搬入日覚書き/井上 佳奈

贈り物/大橋 力

 





基調講演動画撮影・編集/小松崎 剛

この報告誌にご興味がある方は、店頭でお声掛けいただくかHP最下部の「お問い合わせ」よりご連絡下さい。

少し冊子に余裕があるので、ブログを読んでいただいている方にはできるだけお渡しできればと思っています。

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